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裁判のはなし~第2審、東京高裁激闘編~

裁判ですが、2審の結果が出たので記事を書きます。前回記事はこちら

nanasinotaiko.hatenablog.com

1.結果


完全勝利しました。2月頭までに控訴されなければ終わりです。控訴されると最高裁判所でラストバトルです。

 

2.1審判決との違い


勝ちました。終わり。ではさすがに味気ないので判決内容について少し書きます。

1審判決(地裁)と比べて2審判決(高裁)ではさらに俺よりの判決になってました。特に経理上の扱いについて会社側に突っ込みが入ったのが大きいかなと感じました。


経理上の扱いに突っ込みが入ったのは、今回の裁判が労働基準法16条違反か否か、というものだったことが原因です。まず労基法16条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」というもの。今回の裁判の争点は資格報奨金の返還が「労働契約の不履行による違約金」として扱われるかどうかでした。で、資格取得費用や研修費用関連で争ってる場合、判例から言うと以下のような扱いになるようです。

労働基準法16条違反になるパターン>
・問題となってる資格取得や研修が業務命令による場合
・費用の返還の目的が退職抑止みたいになっちゃってる場合
・会社に返還する金が「貸した」ものでない場合(会社が労働者に貸していた金を返してもらうという体なら法律的にはOKなので)

1審判決では上2つにあてはまるから16条違反ってニュアンスだったのが、2審判決は全部あてはまるから16条違反だよねってニュアンスになってました。1審後の会社の控訴理由が「報奨金という名目だけどあれは貸付金なんでセーフ」って主張だったので、「そうは言っても経理上は所得になってんじゃん。却下」って文言が追加された感じです。


3.判決文「裁判所の判断」のとこを一通り書いてみる


こちらの言い分しか採用されてなくて気分が良かったので、判決文の「裁判所の判断」の部分のとこだけラフに書きます。どんな証拠が有用かの参考にでもなれば。後ろにかっこ書きしてるのは引用元の証拠資料。


1.
(1)被告入社前に問題の資格について取得研修の受講と受験を義務化してたよね(弁論の内容)
(2)社員に作成させてる目標管理シートの内容だけど、資格取得を書くことが前提になってるよね。(目標管理シートの内容)
(3)目標管理シートをもとに給料とボーナス決めてるよね(部長からきたメール本文)
(4)「目標とした資格は必ず取得してください」と各従業員にメールしてるよね(部長からきたメール本文)
(5)就業規則に最近「業務関連技術の習得に努めなければならない」と文面追加してるよね(就業規則
(6)「案件受注のため問題の資格の取得を推奨するって内容を資格取得支援制度に書きました」って通達が人事部長から出てるよね(全社向けの社内通知)
(7)報奨金は所得として経理処理してるよね(弁論の内容)
(8)目標管理シート見る限り、資格取得にかかる比率が全体の5割とか3割とかになってるよね。被告が設定した比率を会社側が勝手に上げたりもしてるよね。(目標管理シートの内容と部長からきたメール)
(9)会社のHPに従業員の資格取得者数を書いてアピールしてるよね(会社のHP)

2.
(1)労基法16条は交渉力格差のある労働契約において、違約金によって労働者が拘束されるのを防止するための物です。
(2)資格取得支援金は受験料とか交通費とかの実費とは別に支給されてるものなので、貸付じゃなくて報奨として支給してるものだよね。一般的に、報奨金を支給する一方で一定期間の雇用継続を義務付けて、それに反して退職したら同額を返せっていうのは労働基準法16条違反になります。控訴理由で貸付金だからセーフって言ってるけど、そんな主張今までしてなかったよね。しかも「貸付金」じゃなくて「報奨金」や「支援金」として扱ってるし、所得として経理処理してるんだから採用できません。
(3)目標管理シートで資格取得が前提になってる上に比重が大きいし、それで給料決めてるよね。問題となってる資格も、会社がめっちゃ推奨してるものだし、HPでアピールしてるくらいなんだから明らかに業務関連性は高いよね。「資格取って5年以内にやめたから35万円返せ」ってのも、35万円の返納って退職を躊躇させるのに十分だし、それが5年にわたるってのは労働関係の不当拘束だよね。労働基準法16条違反なので控訴は棄却です。

 

 

ということでまた進捗があれば何か書きます。僕は裁判がアイデンティティオルタナバンドマン。

裁判の経緯をあれそれと書く

初めましてあやちゃんです。私はバンドマンで、これは初めて書く記事なので裁判の話を書きます。

名誉棄損で訴えられたくないので会社名はぼかしてます。知りたい人は直接聞いてくれたら教えます。

1.どんな裁判をしているかと現在の状況をざっくり

 前職の会社(IT系で大手Sier相手に人売りビジネスやってるタイプの中小企業)を退職した際に、在職中にもらった資格報奨金(35万円分)の返還要求を拒否したため、35万円を支払えと訴えられています。

 裁判の進捗をざっくり書くと、以下のような感じです

1審:簡易裁判所で開始(2016年の3月)⇒地方裁判所に変更⇒原告の請求棄却により勝訴(2017年8月)⇒控訴される

2審:第一回口頭弁論(2017年10月)で結審して判決待ち(2018年1月)。

 

2.裁判に至るまでの経緯

 「○○に至るまでの経緯」って字面は創作作品のタイトルっぽさがあり、かつ面白くなさそう、ということでとても良いとは思いませんか。

さておき入社から裁判に至るまでの経緯を説明します。

 

入社してから退職届を出すまで

 前職の会社にはネットワークエンジニアとして新卒で入社しました。就業規則の説明で、総務部長に「うちの会社、労組作るの禁止だから」と言われて入社1週間もたたずにいつ辞めるか考え始めたのはとても懐かしい記憶です。

 

この労組云々の話でわかるように、この会社はわりとコンプライアンスがガバガバで、

・休日に強制参加の社内イベントをやる(業務扱いにならない)

・エンジニア勢の業務形態はほぼ全員偽装請負(グレーなとこもあったがほぼ真っ黒。これは会社というか業界の問題もあるけど)

・安めの案件に配属された社員に、残業代を出さない(俺はやられたことないけど先輩がやられてた)

就業規則に書いてる出張手当が出ない

・なぜか休日にジムに行くことを義務付けられる(人事評価の対象なのでいかないと評価が下がる。もちろん給料は出ない。)

・業務命令として、業務外時間での資格取得を強制する。人事評価の3割~6割くらいを資格取得にされるので、取らなかった場合は給料がモリッと下がる。(他の評価が普通くらいだと1~2万くらいは下げるというメールが部長から投げられていた)

・資格を取れなかった社員に対し、休日出勤させて強制的に勉強させる。給料は出ない。(俺はやられたことないけど同期がやられてた)

 

などのあれやそれやがありました。自分は社長のお気に入りだったので被害は軽微な方だったんですが(中小にしては給与もそんな悪くなかった)、軽微だからといって泣き寝入りする気もなかったので、最後の1年くらいは上司、部長連、社長あたりにたいしてこれこれは違法だからやめろと噛みつくライフスタイルを送っていました。やめる気だったのもあるし、裁判するのも金かかるので言って止めてくれるならそれでいいかなと。

それで社長から頂いた言葉は、「うちがやることは全て顧問弁護士に目を通してもらっており、完全に合法。嫌なら辞めてもらうしかない」だったのでやめて裁判することにしました。エモですね。

上で訴えられたと書いてるのになぜ、と思った方いると思うのですが、もともとはこっちから訴訟するつもりだったんです。なので証拠集めをゴリゴリとやったのち(就業規則・メール・日報・面談の録音等々)、退職届を出しました。元会社は非常に脇が甘かったので、法律的にアウトっぽい書類やメールは大量にあり、証拠集めには苦労しなかったです。多すぎて後日弁護士に引かれました。

退職届を出したあと

退職届を出したということで、ここで絶賛裁判中の資格報奨金の話が出てきます。資格報奨金とは読んで字のごとく資格をとった際に報奨としてもらえるお金なのですが、「資格取得後、5年以内にやめた場合は全額会社に返還する」という就業規則があったのが問題です。この時俺がもらってた報奨金が総額で35万円。会社からはこれを返せと言われたのですが、

 

・金を返す以前にそもそも業務命令で資格取らせておいて、資格取るのに使った時間に給料発生してないのおかしくない?

・上の文句を社長に言ったら「報奨金が給料の代わりって面がある」とか言ってたのに金返すのは輪をかけておかしくない?

・5年以内にやめたら金を返す制度、実質違約金だし労働基準法16条違反じゃない?

 

と考えていたこともあり、支払いを拒否しまして、その前に色々と貰うもん貰ってないんだけど訴えるよ?というお話を会社と開始しました。もちろん会社側が折れるはずもなく、あとは法廷でやりましょうという話になりました。(本当に言われた。テンションがとても上がった)このタイミングで、払うもん払えという請求を会社に内容証明で送り付けたのですが、払わねーよバーカという内容証明が返ってきました。

このお話の中で会社の顧問弁護士と面談したのですが、「請求するならあなたじゃなくて身元保証人になってる○○さん(俺の叔父)にするよ?あなたのせいで迷惑がかかるねー」と言われたのは未だに根に持っています。身元保証人の有効期間はデフォルト3年、指定すれば最長5年なんですが、元会社は前者で、かつすでに入社から3年経過していたこともあり身元保証人の有効期間切れてたんですよね。印象深い心温まるエピソードです。フィクションに出てくる邪悪な弁護士みたいなのマジで存在することがわかり人生経験を積めた。

が、それにプラスして報奨金の返還に従わないのは就業規則違反だからってことで俺のことを懲戒してきました。懲戒とはいっても始末書を書くだけなんですが、こちらとしては反省することなんてないのが問題です。

その話を持ち出してきた総務課長に「始末書って言われても反省することがないので、こちらの言い分書くだけになりますよ?」と聞いたところ「なんでもいいので最終出社日までに出してくれ」と言われました。そこでですね、自分自身とてもエモくなっていたこともあり脳からパンクスピリットがむくむくと湧き出てしまいました。

何をしたかというと、「この会社の規則のうち、○○と○○は法律に反している。社長、○○部長、○○部長は○月○日にこう言ってたがこれも労基法違反である。○○と○○も業務命令って言ってんだから給料を払え。俺を懲戒する前に会社がコンプラをちゃんとやれ」みたいな長文を始末書という体裁で書いて、最終日に全社員に送りつけました。自己顕示欲が物凄く満たされるのでみなさんもやってみると幸せになれると思います。当然会社側はブチ切れまして、退職のための社内処理が終わった後に、総務部長・総務課長・人事部長に4時間詰められるというイベントが発生したりはしたのですが、それはさておき2016年の1月をもって退職となりました。

 

退職後、裁判開始まで

会社を辞めた、さあ訴訟だ!と行きたかったのですが、請求するつもりの額も少額だったので、転職した会社で有給が発生する同年の8月まで待ってからやるつもりだったんですね。弁護士に頼まず自力で労働審判(超簡易版の裁判みたいなもの)をやるつもりでどうしても平日に会社を休む必要があったので。

そしたらですよ、3月の頭くらい(多分)に元会社からの訴状が届いちゃったわけなんですよ。正直なところ、35万円程度で訴えてはこないだろととタカをくくってたので焦りました。最終日に出したエモメールが悪かったのか、俺を後追いして会社とけんかする人が出てくるのを防ぎたかったのかは謎です。エモか利得か、知りたい。S社長、もし見たら教えて。

この時点で金銭欲・正義感:会社へのムカつきが1:1:8くらいの比率になってまして、とにかく完全勝利して嫌がらせしようということで弁護士に依頼することにしました。こちらからの反訴は金がかかりすぎる&万が一にも裁判官の心象を悪くしたくないのでやめました。

頼んだ法律事務所がここです。http://www.hoshihara-lawoffice.jp/

選んだ基準としては、

 

・家に近い

・安い

・専門の中に労働問題がある

 

あたりです。元々準備万端だったこともあり、法律論と手続きさえやってくれれば良いやくらいの安易な気持ちで選びました。

これまでお願いした感想としてはこんな少額の裁判に2年近く付き合わせて申し訳ないくらいにちゃんとやってもらってます。IT系が専門じゃないのでそこはこちらで添削したりするのですが、もともと織り込み済みだったので文句は全くありません。参考までに今回の裁判でかかってる弁護士費用を書いときます。(案件によって多少のぶれはあるものの、概ね同じとのことです)

 

・1審の着手金:約10万円

・2審の着手金:約15万円

・成功報酬(終わったら払う):勝ち取った金額の16%(今回完全勝訴なら35万円の16%で56000円)

 

ちなみに3審までいくと↓が追加されると聞いてます。

・3審着手金:10万円(口頭弁論がある場合は20万円)

 

安いとはいえ、すでに316000円以上の支払いは確定してるわけですね。さらに証拠の録音データを入れてたHDDがクラッシュしたのを直すために14万ほど追加でつかってるため、45万円ほどが裁判費用としてかかってます(しかも録音データなしで裁判には勝てそうという体たらく)。35万円はすでに超えていますね。つまりこの裁判はエモです。

 

裁判(1審)

話を戻しまして、弁護士を雇い裁判が始まりました。争点は「資格の取得が本当に業務命令で行われたか」になりました。業務命令だと問答無用で労基法16条違反というお話です。そのために資格取得と人事評価の相間の強さだの、資格と業務の関連性だのをうだうだとやりました。

弁護士いわく1審は平均して8~14か月くらいで終わることが多いそうなのですが、1審がおわるまで17か月かかりました。長いですね。プログレですね。なぜ長引いたかというと、

 

簡易裁判所地方裁判所にランクアップしたこと(ランクアップに1,2か月ほどかかった)

・法解釈が割とテクニカルな裁判であること。

・相手方弁護士が途中で変わったこと

・俺自身の被害は限定的だったため、戦闘力が相対的に低かったこと(休日勉強やらされてた同期とかならもっと楽勝だったと思うと弁護士が言ってた)

 

あたりが原因かなと思います。とはいえ原告側の請求が完全に棄却され、1審は勝訴しました。口頭弁論すらなかった圧勝だったので、一度も地方裁判所に足を踏み入れることなく終わりました。悲しかったです。お疲れ様でした。とおもったら控訴されました。

 

裁判(2審)

控訴されてから2か月ほどたったのち、東京高裁で第一回の口頭弁論がありました。一回で結審しました。また裁判所には行けませんでした。結審から判決までの間が2か月ほどあり、2018年の1月中旬に判決となります。つまり今は判決待ちです。

 

3.まとめ

ということでこれが経緯になります。裁判の詳細が知りたいとたまに聞かれることがあった&個人的にもどっかでまとめときたかったのでこれを書きました。何より俺はオルタナティブなバンドマンなのでね。やっぱり裁判の話しないとさ、ほら。

これを読んだ皆さんもエモを高め、ふるって裁判をやっていくと幸福になると思います。

裁判ブログにする気はないですが、証拠集めのやり方とかどんな証拠が強かったとかのテクニカルな話は需要があれば書きます。無くても書くかもしれません。なんにせよ、判決が出たらまたなんか書きます。